どっちも違法じゃないの?
本記事では「MLM(マルチ商法)とネズミ講の違いをテーマに解説していきます。
MLM(マルチ商法)とネズミ講の違い早見表

MLM(マルチ商法) | ネズミ講 | |
違法性 | なし | あり |
商品・サービス | あり | なし |
リスク | 低い | 高い |
MLM(マルチ商法)とネズミ講の違いは、違法性と・商品サービスの有無・リスクです。
MLMは特定商取引法で認められている合法的な販売形態である一方で、ネズミ講は違法です。
またMLM(マルチ商法)は商品サービスがある一方で、ネズミ商品にはなく、安全性が高いのはMLM(マルチ商法)です。
そのためMLM(マルチ商法)には、参加しても良いですが、ネズミ講には参加してはいけません。
MLM(マルチ商法)とは?

MLMは、特定商取引法第33条で定義される「連鎖販売取引」という販売形態を指します。
MLMは英語名「Multi-level marketing」を略したものです。
日本ではマルチ(Multi)商法やネットワークビジネスと呼ばれることもあります。
しばしばMLMは法律で禁止されているネズミ講と近接することがありますが、MLMは法律で認められていることを理解してください。
MLM(マルチ商法)の定義
以下の条件を満たす販売取引が、MLM(マルチ商法)と定義されます。
- 物品の販売(または役務の提供等)の事業である
- 再販売、受託販売もしくは販売の斡旋をする者を集めている
- 特定利益(紹介料や販売マージン、ボーナス等)が得られると誘引している
- 特定負担(何らかの金銭的な負担)を伴う取引をしている
つまり
といった販売取引がMLMということです。
MLM(マルチ商法)の特徴
MLMの特徴は消費者自身が販売システムに参加できることです。
商品を購入した者は他の者に商品を紹介し、販売することで利益を得ることができます。
MLM企業の多くはステアステップと呼ばれるシステムを導入しています。
ステアステップとは「AさんがBさんに商品を販売し、BさんがCさんに商品を販売すると、Bさんの利益の一部をAさんが受け取れる」という仕組みです。
そのため販売スキルの高い人は、非常に多くの利益を得られます。
MLM(マルチ商法)の歴史
MLMは1930年代のアメリカで始まりました。
1950年代にはタッパーウェアやアムウェイなどの企業が登場しています。
その後、日本でもイーオングループ、山之内製薬、カネボウ、ダイエー、ソニーなど大手企業が参入。
現在でも三基商事やノエビア、シャルレ、日健総本社などが第一線で活躍中です。
アメリカの大学では1つのマーケティングの形態として紹介されています。
MLM(マルチ商法)の法規制
MLM(マルチ商法)は法的に認められている販売形態ですが、厳しく法規制されています。以下の場合は違法とみなされます。
- 勧誘目的だと言わずにアポを取る
- 商品について事実と異なる説明をする
- 自宅などで勧誘を行う
- 相手を威迫して強引に勧誘する
- 誇大な表現を使用する
勧誘目的だと言わずにアポを取る
といって勧誘目的だと事前に知らせずにアポイントを取ると、特定商取引法33条の2に氏名などの明示という規定に違反したことになり、違法です。
MLMの大手アムウェイでも、以下のように明記しています。
お友達にアムウェイ・ビジネスを説明するつもりでお誘いする場合、約束する時点でその目的を伝える必要があります。
引用:アムウェイ
商品について事実と異なる説明をする
勧誘の際や、勧誘後に商品の品質や特定利益や特定負担などの重要事項について、事実を伝えないことや事実と異なることを伝えることは特定商取引法34条の1で禁止されています。
たとえば
- 退会する際に違約金がかかるのを黙っていた
- 5人以上に紹介しないと報酬がもらえないのに、もらえると言った
このような場合には法律を違反したことになります。
自宅などで勧誘を行う
特定商取引法34条の3では公衆の出入りする場所以外の場所での勧誘を禁止しています。
事前に勧誘目的でアポイントを取ったとしても、自宅など公衆の出入りしない場所で勧誘を行えば違法です。
勧誘を行う際には、カフェなど公衆の出入りする場所である必要があります。
相手を威迫して強引に勧誘する
特定商取引法34条の2では、勧誘前後において相手を威迫することを禁止しています。
威迫とは「相手方に不安の念を抱かせる行為」全てを指します。
たとえば強引に勧誘を行い「契約しないといつまでも帰してもらえないのでは」と思わせた場合、威迫に当たる可能性が高いです。
勧誘を行う際には、相手の意思を最大限に尊重する必要があります。
誇大な表現を使用する
「絶対に儲かる」「肌のくすみが消える化粧品」というように、誇大な表現を使用することは特定商取引法36条で禁止されています。
対面で勧誘する場合、証拠が残らないことは多いですが、事実に基づいた特定利益や商品品質の説明をしなければなりません。
個人への法規制の限界
ここまで説明した法規制に違反すると特定商取引法を違反したことになり、事業者は営業停止や場合によっては逮捕されることがあります。
しかし事業者以外のMLMを利用して稼いでいる個人が逮捕されたり、訴えられることはほとんどありません。
再発防止やクーリング・オフを命じられる程度です。
そのため現在でも、違法行為スレスレもしくは違法行為を行って勧誘をする方は少なくありません。
ネズミ講とは?

ネズミ講とは「無限連鎖講」と呼ばれる連鎖配当組織のことです。「ネズミ」はネズミ算式に増幅することに由来します。
しばしばMLM(マルチ商法)と混同されますが、大きな違いがあります。
その違いとはネズミ講には商品が存在せず、違法であることです。
無限連鎖講の防止に関する法律によって、ネズミ講は以下のように定義されています。
金品(財産権を表彰する証券又は証書を含む。以下この条において同じ。)を出えんする加入者が無限に増加するものであるとして、先に加入した者が先順位者、以下これに連鎖して段階的に二以上の倍率をもつて増加する後続の加入者がそれぞれの段階に応じた後順位者となり、順次先順位者が後順位者の出えんする金品から自己の出えんした金品の価額又は数量を上回る価額又は数量の金品を受領することを内容とする金品の配当組織をいう。
ネズミ講の特徴
ネズミ講の特徴は必ず破綻することです。
ネズミ講は参加者が2人以上を勧誘することで、後順位者が先順位者に支払う加入金によって儲かるとするビジネスです。
しかし参加者が2人以上を実際に勧誘すると28代目には日本の人口を超えます。
- 1代目:1人
- 2代目:2人
- 3代目:4人
- …
- 6代目:32人
- …
- 9代目:256
- …
- 28代目:1億3400万人
このようにネズミ講は「2人以上を勧誘すること」を前提としている以上、必ず破綻します。
そのため
終局において破たんすべき性質のものであるのにかかわらずいたずらに関係者の射幸心をあおり、加入者の相当部分の者に経済的な損失を与えるに至るもの
として禁止されています。
ネズミ講の法規制
違法であるネズミ講は厳しく規制されています。
第五条 無限連鎖講を開設し、又は運営した者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第六条 業として無限連鎖講に加入することを勧誘した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
第七条 無限連鎖講に加入することを勧誘した者は、二十万円以下の罰金に処する。
また違法に儲けたお金はお金を出した側からの民事上の返還請求権が成立します。
しかし海外銀行にお金を写したり、他人名義の不動産を購入することで、お金を隠す事業者は多いです。
中には刑務所から出所した後に資産が残ればよいと開き直る者もおり、ネズミ講は無くなりません。
MLMは合法!ネズミ講は違法

このページではMLM(マルチ商法)とネズミ講の違いを紹介してきました。
最も重要な違いは、MLMは参加者も利益を得ることができ合法であり、ネズミ講は利益を得られない参加者が多く、非合法という違いです。
MLM(マルチ商法)とネズミを混同することで、利益を得られるチャンスを逃したり、逆をお金を失う可能性があります。
混同しないように注意しましょう。